プラスチック(ABS/CFRP/GRP)

不定期コラム Vol.344
2001/08/05作成

プラスチックにも色々な種類があります。詳しくは
http://www2.plala.or.jp/cats-factory/mat/jyusi.html
 樹脂素材諸元表 を見てもらう事にして
ThinkPadで使われているのは判る限りでは
ABS、CFRP、GRP等です。


ABS :アクリロニトリルブタジエンスチレン
 Acrylonitrile-Butadiene-Styrene resin
 TP700/720以前の初期のマシン、PS/55noteに使われたようです。廉価
 なためか、最近のモデル(X20)でも一部に使用されたりもしているようです。
 「普通のプラスチック」という表現がよく出てきます。


CFRP :炭素繊維複合材料
 carbon fiber reinforced polymer
 All about ThinkPadのメカ編で筐体の話が出ていますが、それによれば
 初期はABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)だったのですが、ディスク
 パック方式採用でケースに色々と穴を開けるために強度強化の必要に迫
 られ、まずはTP700,720Cで強度がABSの10倍、価格も10倍というCFRP
 のシャーシ(骨組み)を使ったようです。この骨組みだけを他の素材にして
 強度を増す方法は最近ではiBookがマグネシウムをフレームに、それ以外
 をポリカーボネートという形で使われています。

 TP750Cからはコストと軽量化の問題でシャーシ方式を止めて、全部をCFRP
 で作るようになったようです。キーボードを跳ね上げてオプションを交換する
 弁当箱方式も強度の面で効果があったようです。素材だけでなくデザインも
 含めて色々な試行がされたようです。

 All about ThinkPadではTP750では圧縮成形という技術で成形され、サイクル
 タイムが長くかかるため、一日に数百しか作れなかった、TP760ではインジェ
 クション成形という技術により、一つの金型で一日に千数百が成形できるよう
 になったという話も出ていました。ABS樹脂に比べてCFRPは厚みを薄くできる
 ともありました。

 出典は同じですが、TP750C〜では圧力と熱を加えることで材質が固くなると
 いうコンプレッション処理をされたCFRPが使われたのに対し、普及機種でコスト
 削減が要求されるTP360Cといった300番台のモデルではCFRTP(サーモプラス
 チック(熱硬化性樹脂)が使われたそうです。これは普通のプラスチックにカーボ
 ンを混ぜた熱硬化性樹脂という材料で、前者がABSの10倍程度の強度を持つ
 のに対し、後者は7倍だそうです。

  CFR"TP": Thermoplastics
   "TP"は熱可塑性として訳されているようです。
   例 FRTP Fiber Grass Reinforced Thermoplastics ガラス繊維強化熱可塑性樹脂


GRP(GFRP) :ガラス繊維強化プラスチック
 Grass-Fiber Reinforced Plastics
 TP560ではCFRPに比べて強度が1/3ですが価格がかなり安いGFRPが本体、
 (耐衝撃力を要求される)ディスプレイ側にCFRPを使うといった芸の細かさも行わ
 れていたと、これもAll about ThinkPadに出ています。

 こうして見てくると用途に合わせて材質を使い分けるのは、特に最近のX20やs30
 といった非プラスチック系の材質を使う際でも手慣れたものだったように思われます。

CFRPについては、何故流行のマグネシウムを使わないかという質問に対する説明を
IBMのサイトの古い記事で見る事ができます。

http://www-6.ibm.com/jp/pc/thinkpad/tpabout/q3.html
 ThinkPad Quality -Toughness-

ポイントは
1.普通のプラスティックの10倍は強い
2.電波の遮蔽効果も高い。
3.錆びない
4.テストの結果、CFRPがマグネシウム合金よりいい結果を得られた

 ということで、高密度な製品をつくるのに適した素材との事です。
 F1カーのシャーシに使われているというのも出ています。

 まぁ最近のThinkPadではメタル系素材を混ぜたCFRPが使われているので
 この記事の当時とは少し違ってきているかもしれません。

 メタル系の素材を使う事で対衝撃力がダウンするという話も
 日経BP系のサイトにありました。

http://nmc.nikkeibp.co.jp/kiji/ts554g.html
 日本IBM,酸化チタン複合CFRPをモバイルPC筐体に
  薄肉・軽量と量産性を両立,肉厚0.9mm以下のマグネ合金も採用

  メタル系の素材の使用によって、薄型化、軽量化、電磁波シールド性向上、
  炭素繊維の配合量減少による量産性や外観性状の向上というメリットが
  あったそうです。反面、耐衝撃性は低下したともありました。


メタル系の素材(マグネシウム、チタン)を混ぜたCFRPについては
また次回以降で。

判っているところでは、
TP A/T      チタン強化炭素プラスチック(CFRP)
TP X20      酸化チタンウィスカ混合CFRP,マグネシウム合金,CFRP,ABS
TP s30      マグネシウムを配合したアルミニウム合金,CFRP
 といった材質になっているようです。

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