IBMのデザイン・アイデンティティ


不定期コラム Vol.326
2001/07/22作成

一部では真っ黒ダサダサとか揶揄もされたりするThinkPadのデザインですが
何回かに分けて考えてみたいと思います。むろんちょっと前にやった「ソニーと
デザイン」への対抗です。


ThinkPadのデザインは基本的には「黒」を基調としています。そのデザインを
評価してくれる方の意見では「シンプル」「飽きがこない」といったものが多い
し、また初代PS/55noteから変わらぬデザインに「黒」イコール「ThinkPad」と
世間的に定着しているようです。むろんソニーも黒いマシンを出していますし
ピアノ地も他社(他者)プロデュースであります。パソコンを使わないゲーマー
なら黒いマシンはプレイステイステーション2(PS2)ではあるのでしょうけど。
あ、一部のAptivaやNetFinity、AS400eシリーズもそうでしたね。

ただ、「黒」イコール「IBM」という判り易いコンセプトは偶然に生じたものでは
ないようです。そこには「デザイン・アイデンティティ」という主張が盛りこまれ
ています。

IBMのサイトには幾つかデザイン関係の記事が収録されています。

http://www-6.ibm.com/jp/design/about/history/
 IBM Design-IBMデザインの歴史  から引用
「かつて、IBMの元最高経営責任者のトーマス・ワトソン・ジュニアは、
"Good design is good business"という言葉をIBMのコーポレート・デザ
イン・アイデンティティとした。それからおよそ35年。その言葉は今なお
デザイン・ポリシーとして引き継がれている。」


http://www-6.ibm.com/jp/design/about/identity/
 IBM Design-アイデンティティ&デザイン から引用
「デザインは、企業のブランド・アイデンティティー(*同一性)を推進する
重要な戦略。...デザインと芸術の違いは、デザインは常にユーザーの
視点に立ち、そのデザインができるだけ多くの人に歓迎されることを考
えて創ることだと思います。また、優れた機能的デザインは、製品の性
能を向上させること、無駄な経費を省くことにも貢献し、最終的に企業の
利益に結びつくものでなければならないと思います。」


http://www-6.ibm.com/jp/design/about/thinkpad/
 ThinkPadの進化  から引用
「ThinkPadは、日本で生まれ、日本でデザインされている世界共通ブラ
ンド。無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインに手を加えることは難しいが、
新製品ごとに少しずつ流行を取り入れ、常に新しく生まれ変わっている。
リピーターが多いのは、品質もさることながら、お客様を飽きさせないデザ
インに秘密がある。」


  主要顧客がビジネスユーザーというのが暗黙のうちに想定されている
  のが泣き所のような気がします。

  確かに私のような企業ユーザーでは変わらないこと、継続性は美点で
  すし、無駄な経費も無いに越したことはないです。

  ではソニーのデザインが何故あれだけ世間的に受けたか、という点につい
  てどう考えたらいいのでしょう。

  あれはデザインでなくて芸術だと言ってしまうのは簡単です。でも個人的
  にはターゲット層が違う事、IBMほど耐久性、実用性、シンプルにこだわ
  らなかった(あるいはできなかった)のが「幸いしたという気がします。全て
  のメーカーが同じ方向で物造りをするより毛色が変わった者がいた方が市
  場は活性化しますが、銀パソブームはアンチThinkPadとしてはなかなか
  強烈でした。

  「黒」の継続にこういう背景があると確かにすぐには変えようもありませんね。
  銀鼠色は苦肉の選択だったようですが。IBMはこういう理由で「黒」を選択
  しているんだと地道に情宣をするしか対抗する手は無さそうです。バイオレ
  ットのAptiva Noteもそれなりには期待していたのですが最近はちょっとAptiva
  のCM見ないし、ブランド的にはマイナーになっちゃった感じですかねぇ。



他にはこのようなページもあります。

http://www-6.ibm.com/jp/pc/experience/design/index.html
 IBM PC experience コンセプト  から引用
「いつまでも変わらない価値。IBMブランドのデザイン・アイデンティティーデザイン
スクエアなブラック・フェース。
これは現在のIBM PC製品に共通したデザイン・アイデンティティーです。
なぜ、黒か?
その答えは、曖昧なところのない色や直線で構成された「シンプルさ」の中にこそ、
プロダクト・デザインの王道があるからです。
流行に左右されない普遍性を持つこと、つまり買ってすぐに古びたりしない価値を
持つこと。時代への即応とともに、それがIBM PCの大きなテーマなのです」


ニュースサイトでIBMのデザインの考え方が判るものとして
下記を紹介しましょう。

http://ascii24.com/news/i/topi/article/1999/09/28/604679-000.html
 日本IBM、“IBM製品デザイン・セミナー”開催−−IBMが描く未来のPC像とは?
そこからIBMの説明を引用します。
「当社のデザインポリシーは一貫している。まず“使いやすさ、だけでなく、将来
ユーザーが何を行なうか、という点まで想定したユーザー第一のデザイン”である
こと。次に、“すべての製品にIBM製品としての関係性が保たれているデザイン”
であることだ
Richard Supper(*リチャード・サッパー)氏が、「“美しいものを作りたい”という芸術
的な願望は、合理的や理性的な製品の開発を追究するビジネス界では通用しに
くいものだ。それでも我々は、朝から晩まで、何ヶ月、何年経っても使用に耐え、
しかも好かれ続けるような製品を今後とも作っていきたい」



今では入手困難なAll about ThinkPad 1991-1998にはデザイン部門の記事も
あります。気になった個所を引用します。

IBMは、たぶん他の会社に比べてデザインを決めるときにも「どっちがきれいか」
ということで決めている部分がありますね。きれいかどうかの解釈はひとによって
いろいろありますが、よその会社の場合はきれいかどうかで決めていないところ
も多いですからね。どっちが売れるとか、より目立つかというようなデザインもあり
ますからね。(*インダストリーデザイナーのN氏の発言)


VAIOノートは目立ち屋かい、と思わず煽りたくなってしまいますが。
IBMのデザイナー達によるVAIOノートのデザインの批評なんてあると、ものすごく
興味がありますが、あまりやり過ぎるのもまずいでしょうね。もし有っても外部には
出せないでしょう。自分の感覚でそちらはボチボチやっていきましょう。シリーズが
変わった時にどういうところが継続されて、どういうところがカットされているか。
あるいは一新、一新(某政党みたいですが)ばかりなのか。

次回はリチャード・サッパー氏について。

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