前回のプレゼン編の続きです。新製品のプレゼンテーション
の後に行われた質疑応答の記録です。
02/04に上げたものより多少加筆、訂正を行っています。
なお、*で始まっている個所は私の注釈、意見、感想です。
またヤバそうな話はこちらでぼかしている個所もありますし、
記憶に頼って書いていますので、必ずしもこの通りに話が
された訳でないという事にしてください。また質問の順番も
バラバラです。
最初に、おかげさまで世界でNo.1になったという話が紹介
されました。拍車が湧いたかまでは覚えていませんが。
Q:海外での保証期間は3年、日本は1年。この差は何か?
A:海外で3年というのは、それにかかる費用を本体に
折りこんでいるか、裸で価格設定しているかの差と
競走上の理由。ぶっちゃけた話、米国ではDELLとの
競走上、3年にせざるを得ない。日本では少しでも
値段を下げたいというニーズがある。
ワランティの問題もある。
企業向けの販売をしている特約店(ビジネスパートナー)が
顧客と結んでいる保守サービスとの兼ね合いも大きい。無
償保守期間が長くなると特約店の保守からの利益が減収
になる。ここのところの折り合いをどう付けるかで色々
とやっているところ。時代の趨勢という風にできるか、とか。
デスクトップでは全てオンサイトということで公平という事にした。
高いIBMからリーズナブルな価格のIBMと言われるよう色々
やっている。10万円を切るAptivaや139,000円のノートを出す
など、某雑誌から安売り大魔王(?)といった称号ももらった。
ゴールは判っている。
直販のDELLと同じ価格をヨドバシのポイントカードで。
Q:修理に出すときにIBM本体とPC DOCKでは料金が違う
事がある。この差は一体何か?
A:IBMの場合、保守用の拠点は超大手顧客の近くにあった
りはしたけど、全国的には少ない。対して国産メー
カーはもともとFAXの保守のために全国にサービス拠
点を持っていた。国内メーカーに対抗するために大
きな市場の大手販売店(リセラー)の中にお願いして拠点
を設けたのがPC DOCK。運営はお店が行っている。その
ため、お店の考え方によってバラツキがでているようだ。
Q:TP535/235といった小さいモデルはもう出さないのか
A:現在のパソコンの市場は1200万台、このうち半分の600
万台がノートパソコン。そのうちの30%の200万台がウルト
ラポータブル。ただしこれにはTP570,X20も含まれている。
市場調査会社も大手は外資系なので、彼らのくくりに日本で
いうところのサブノートというのが無い、というか、理解できて
いない面もあるかも。
X20はワールドワイドなサブノートとなる。
海外ではA4ノートが好まれるし、大き なマシンの持ち運び
も海外では苦にならない。海外では女性が770クラスを小
脇に抱えて、なんてのはザラ。家から駐車場まで、あるいは
飛行場の駐車場から飛行機の搭乗口ぐらいしか手では持ち
歩かないのでは、というぐらい。サブノ
ートの市場は日本が
中心。米本社を説得しないといけない。プレゼン編のTP235から
TP240の図で間に少しブランクがあるのは当時の担当者が米を
説得しきれなかったかもしれない(笑)。
海外では大きなモデルが好まれるので日本のサブノートが
重視される環境を説得するのに手間がかかる。逆に日本の
会社では海外でA4が主流という事を説明するのに苦労して
いるように見える。米国に持ち込 まれた国産メーカーのサブ
ノート機が不況のせいもあって売れないからと言って国内に
還流すると値崩れが起きるので頭が痛い事になる(笑)。
ミニノート、SONYのC1やリブレットといった製品があるが、
IBMがやるからには全部の市場を取らないといけない。
持っている人が持ち歩いているから多く売れているようには
見えるだけ。確かにマインドシェアが高いし目立つ製品では
あるけれど。
一定のキーボードサイズと画面の大きさが求められて
いるので、不必要に小さいモデルは...。現状のキーボードと
10.4"XGAはバランスが良い。IBM JAPANとしては(サブノート
を)はもちろん続ける。
Q:PC CARDx2を出して欲しい
A:PC CARDは場所を取るデバイスなので、特にスリムなタ
イプでは2枚は無理。モデムやLANを内蔵することでかな
りカバーできる。ミニPCIは一つの方法。
カードを半分露出させた形で、という手もあるが。
今後はX20で採用したようなCFスロット+PC
CARDx1のような物の方にいく。
Q:英語キーボードの換装どころか、入手自体が大変困難。
IBMのe-businessのCMのようにたらい回しされたことも。
何とか改善できないか。
A:英語キーボードの在庫は本来は国際保証のためのもの。
海外から持ちこまれる製品の保守用の在庫のストックと
して持っている。パーツセンターの連絡先があまりにも
知れ渡ってしまったため普通のパーツと同じ感覚で依頼
が来るが、何でそんなに保守用のストックがいるんだと
言う米とやりとりをして数量を確保しているので、納期
がかかったりするのは現状では止むを得ない面がある。
機種によっても例えばTP390Xではニーズが少ないだろう
な、とか、570は多めに在庫を持つとか苦労している。
正確な数が把握できないのが難しいところ。某S社がやっ
ているWEBでの注文受付方式も選択肢の一つ。
英語キーボードに関しては、保守上の問題もある。組織
が大きな会社なので、マニュアルなどがきっちりしてい
る。そのため、このモデルのパーツはこれ、という事に
なっているのに英語キーがついているマシンが修理に出
されてくると、日本語キーボードで戻せばいいのか、英
語キーボードでしないといけないのか、保守部門が混乱
する。
最初からT社のように海外モデルを売るという問題では解
決できない。英語キーボードモデルは基本的には海外OS
だが、国内で求められているのは日本語OSなので。リカ
バリーCDも日本語キーボードで作られている。昔は判る
人だけがやっていたが、最近はPCを使う層が広がってい
るので対応が難しい。意識的にハードルをあげている面
もある。
ITryKitがらみで全部かなキーだけというのものも作って
みたが異様だった。
TP240ではケーブル3本がまだ必要だったがA/Tシリーズで
はコネクタ方式なので取り外しは簡単になっている。次
のサブノートもそういう方向になっているだろう。その
時点でキーボードに関しては顧客による修理も検討して
いる。キーボードだけをこちらから送ってユーザーが自
分で換装するというもの。
*US KBに関しては熱烈なファンが多くて、自分が日本語
KBが不要だからといって、コンシューマー向けを全部UB
KBにしたらどうだ、といった意見が出てくるのは困り者。
色々な環境、色々なユーザーがいて、どちらが現状で商
売になるかを考えたら結果は出ている訳で、要は少数派
をいかに救済するか、という問題。ユーザーのニーズに
細かく対応するというイメージアップ効果はあるかもし
れないが、それによるコストアップは基本的には受益者
負担でやるべきで多数派には転嫁しないで欲しいもの。
Q:Windowsキーが無い事をマイナス評価するような雑誌も
あるぐらいなのだが、今後はどうなるのか。
A:i-Seriesはコンシューマー向けなのでWindowsキーを付け
たがビジネス向けモデルでは予定は無い。
Q:レガシーデバイス、特にシリアルポートを無くさないで
欲しい。特にネットワーク機器のメンテナンスに不可欠。
A:レガシーフリーとずっと言われているがなかなか進まない。
最近もティムナ(インテルの統合チップの開発コード)が
ポシャったぐらい。企業のお客様の事を考えるとIBMが
一番最後まで保持するだろう。今後の事はインテルの
チップセットが問題。440MXあたりは(*何とかかんとか)
マイクロソフトのOSのサポートも。レガシーフリーのOSだと
安くなるとかあるかもしれない。ただ、サブノート系で
は省かれる可能性が高い。
Q:保守部品の価格が高い
A:特に過去の製品の場合、価格が高かったことと販管費が
上乗せされるため高止まりしていたのは事実。最近役員の
号令でお客様の視点で(無理やり)価格の見直しを行った。
Q:何故急にiシリーズの色が黒から銀鼠色に変更されたのか
A:3年ぐらい前、他社製品のグレー、銀が流行った。色が黒だ
から隠れて見えない、(*店頭で埋もれてしまう)。色が黒いか
ら売れないのでは、という議論がされた事があった。
無塗装のモデルも安っぽくなったと評判がいまいち(*TP390
系とか1456あたりかな?)。Aptivaの黒はPS2対策。
(*ペイント・ブラックとか言っていたみたい)
色を塗る、で、どうするかの話になって出て来た話。
当時としては米本社との交渉の中から出てきたもの。
紫とか銀とか色々作ってみた。
と、米IBMから「いい黒」ができたとの話。
他の数少ない選択肢との比較の上で選べるベターなものだ
った。あの色も向こうの感覚では「黒」の一種になる。
一度変更したものをまた元に戻すのは相応の覚悟と手間が
かかるが、黒に戻すことも考えたい。
*ThinkPad Clubの中では5月の次期モデルでは黒に戻すと
明言したという話も出ていますが、メモが無いとそこま
で言ったかは私は何とも言えません。この後、満場一致
(*IBMの人間も含めて)黒の方が良い、という意見に賛成
しました。TPi1157を使っている私としては今の色でも
構わないのが実は本心ですが、それはそれとして。
ラメが入ったX20の塗装がキラキラしているのは
スターフェイク、日本では資生堂ブラックと言われている。
チタンは塗装しないと筋(地?)が見える。そのままでは
米ではイッシューと言われた。キラキラしているのはチタ
ンではない。(*といった色々こぼれ話も出ていました。)
Q:本体のスリム化に合わせてキーボードのタッチが昔からに
比べるとパシャパシャというかストロークが減る方向に
なっているのではないか
A:ストロークは変わっていない。キーボードだけで考えては
いけなくて、フィーリングに関してはキーボードの下がどうなっ
ているかが関係しているようだ。ドライブが入っていると
か、空間になっているとか。IBMはキーボードには他社の
倍以上のコストをかけている。
Q:HDDの故障が最近は多い。何かあったのか。
A:修理等で数字に上がってきて異常値として出ているものは
把握しているつもり。ただ工業製品で品質にバラツキが出
るのは仕方がない面もある。お客様によっては同時期に同
ロットのものが揃えば不良が続くということもありえるが発生
頻度は個々のケースで違う。ただ品質は大きな課題。Think
Pad Clubの該当URL(*HDDに関するアンケートかな?)を社内
に知らせたりして注意は喚起している。
Q:ファンレスのモデルは出ない?
A:インテルのCPUでも万が一暴走することがある。最悪の
場合、キーボードが溶ける。(*他社が)ファンレスで載せている
クルーソーは暴走しないのだろうか。IBMはSAFETYを重視
する会社なのでファンは(*万が一のために)残しておきたい。
Q:今回の超低電圧版の製品に用いられた省電力技術は既存のCPUの
マシンにも(BIOS UPDATE等を通じて)フィードバックされるか?
既存モデルのチューンの可能性は?
A:一部はそう。ただし回路周りをいじったところもあるので完全に
同じという訳にはいかない。
IBMは(デスクトップはSurePathとして早くに止めたが)ノートPC用
には最近まで自社でBIOSを書いていた会社。インテルのCPUが
うまく動かないなんて事も見つけてインテルに問い合わせると
他からは問い合わせが無い、そんなことを言ってくるのはあんた
のところだけ、と言われたことも(*他社はそこまでやっていない)。
(*CPUを止める技術(スロットリングとか言っていたかな?)とか
この辺はIBMは他社より一日の長があるというようなことを
言っていたようだ)
Q:古いモデルのHDDの8GBの壁を超えるBIOSの提供の可能性は?
A:当時のBIOSを書いていたチームも今も社内にいるかどうかすら
判らない。過去のモデルのためにニューデバイスの開発の予算
を取るのも困難。電磁波に関するような各種自主規制のテストも
やらないといけない。実質的には不可能。
Q:古いモデルのためにHDDの8GB未満の製品を供給して欲しい。
無くなるときは事前にアナウンスを
A:(*HDDも開発速度が速いからとか言っていたような。)
現在市場に出ている5GBは早めに買っておいた方が良いですよ。
質疑応答が終わった後、デモマシンを囲んで色々とオフレコの
話が飛び交ったようです。私はそこに加わらなかったのでよく
は判りません。(LAN接続の)ADSLがこれだけ普及してくるとは思
わなかったのでモデム(の標準搭載)は思惑違いだったという声
が聞こえたぐらいですね。
議論が白熱したためもあって自己紹介の時間がなく誰が誰か判
らないのはちょっとマイナスでした。各自名札なりゼッケンを
用意すればよかったかも。もっともゼッケンでは一見組合の団
交みたいな感じになってしまいますね。今回は新製品のお披露
目オフということなので前半がプレゼンテーションで潰れてし
まいました。品質向上なり意見のぶつけ合いに関しては、専用
で言いたい放題やれる場があるといいですね。もっともユーザー
を招いて辛らつな意見を担当者の前で言わせてくれるIBMのオー
プンな姿勢には好感が持てます。IBMの方からは今後の新製品
発表の際などにまたやりたいね、という意見もThinkPad
Clubで
の話ではあったそうですから、今後に期待しましょう。
今回の人集めに尽力されたThinkPad ClubのOZAKI'Sさんに感謝
します。個人的にはAll about ThinkPadの刊行打ち上げパーティ
以来顔を合わせていない面々(田添氏,ooyama.h氏(顔を忘れてて
すみません、)とか)や、ThinkPad LoveのPONTA氏と再会できたの
が良かったですね。二次会と行きたかったところですが、徒歩で
30分ぐらい歩いて22:30に会社に戻り1:30までパソコンの修理、
3:30までプレゼン編の報告作成をやったという充実(?)したスケジ
ュールのため断念しました。
(前回の訂正)
前回オプションの項でニアーダプターと書いたのは実は
一部の航空機で使える「エアーアダプター」の間違いでした。