MCA退役

不定期コラム Vol.92
2000/07/17

土曜、日曜の作業で最後のMCAマシンが退役しました。
まだスタンドアローンで3270端末がJDOSで数台動いて
いますが、これは特殊用途なので計算外と考えての話です。

MCAはかつて勢いがあった頃のIBMのテクノロジーの象徴でした。
 http://www.reitaku-u.ac.jp/~ysamejim/computer/phrases/491.html
  MCA

MCA (Micro Chanel Architechture)
 マイクロ・チャネル・アーキテクチャー
 386時代の到来と共にIBMがISAバスのPC/ATとの互換性を振り捨てて
 OS/2を始めとする32BIT OS用に開発した高機能な拡張バスです。
 従来のISAバスより高速、セットアップもADFファイルによって
 自動化されているなど、今で言うPlug&Playを先取りしたものでした。
 対抗規格としてISAと互換性を保った32BITバスのEISAというものも
 ありました。どちらもVL,PCI,AGPと続く高性能化の前に既に現行の
 製品ラインナップからは姿を消しています。

この辺の流れについては、例えば下記のURLが参考になるかもしれません。
 http://www.nifty.ne.jp/forum/fpcu/pchist/pchist1.htm
  PC History (before DOS/V)
  IBM&互換PC年表(1981〜1990)
 http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/6248/pcatbus.html
  PC-AT compatible architecture's BUS

この最後のPC750 MCA(6886-J04)も本来のMCAマシンと
してでなく、役員用にあまり性能は良くなくて構わな
いがサウンドが鳴るマシンを急いで用意しないといけ
ないというところから用意したものです。

初期状態ではCPU Pentium-133,HDD 1080MB,OnBoard S3
868でしたが、最終的にはMMX Pentium 0DP-200MHz,4GB,
MillenniumII+3COM MCA LAN CARDという仕様でした。
HDDはAdaptec29040に接続されたFastSCSIの物でした。

代替機はエントリーサーバー機のNetFinifty1000です。
Adaptec2940Wに接続したWideSCSIのHDDを搭載したモデル
です。それ以外の仕様は手馴れたPC300PL 6892と同じで
すが、SCSIの安定性、耐久性を生かした用途に使おうと
配置を延ばし延ばしにしていたマシンです。

今回このマシンを使ったのは時間が無い中で、できるだ
け迅速にPC750 MCAからデータをCOPYし易く、かつ、セッ
トアップも速いもの、という点からでした。PC750 MCAの
HDDを外して、FastSCSI用のケーブルでNF1000の2940Wに
接続しました。最初SCSIのIDをどちらのHDDでも0に設定
するというチョンボをやってしまい、HDDが1台しか見え
ない状態でした。これはFastSCSIの方のIDを変更する事
で直りました。

MCA用の拡張アダプターは高価でサードパーティ製品や
エンターテインメント分野の製品が少なかったこともあり、
結果的に敗者となってしまいましたが、その先進性は、
当時のIBMのPS/55というデスクトップ機のユーザーには
誇りに思えるものでした。

熱心なPS/55ファンの方の中にはホームページ
を作られている方もいらっしゃいます。
 http://www.ny.airnet.ne.jp/yamasita/ps55.htm
  PS-55 Know How
 http://www.propel.ne.jp/~sakai/tukuruder/5530/5530.html
  IBM PS/55 5530T 復活?
 http://www.its-j.co.jp/MCAfan/
  Be-Stock MCAfan
 http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/5595/
  PS/55の世界
 http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/5595/FQA.html
  IBM-PS/55関連の技術情報

1987年から始まったPS/55は1995年2月にPC/AT互換機路線のPS/Vと
統合されてIBM PCシリーズとして再スタートしました。

 http://www.zdnet.co.jp/pcweek/inks/950217/950217p1002.html
 レジューム機能などを備え IBM PCシリーズが復活

この時はPentium-90MHz,PCI/ISAのPC750 6885と486,PCI/MCAの
PC720 6860が用意され、MCAはPC720として継続されました。
1995年10月にはPentium-133MHz,6885と同じケースを使った
6886が登場しました。

 http://www.jp.ibm.com/pc/desktop/old_dsk/0681.html
  Personal Computer PCI-MicroChannel Model
 http://www.jp.ibm.com/Products/news/101995/cover.html
  IBM Personal Computerの新しいラインアップ 発表

PC750 MCA(6886)は企業に多いMCAユーザーを普通のPC/AT互換
機路線にソフトランディングさせるためのマシンでした。
もっとも価格が高かったため、導入台数はあまり無かったの
かもしれません。MCA路線はこの後、1996年6月頃に打ちきら
れました。

会員制の@niftyのFIBMJ MES( 4)というフォーラムの中の
会議室は今なお頑張るMCAユーザーの牙城です。残念ながら
私は敢えてあそこに復活するつもりはありませんが。最近
はMCAを搭載した当時高価格だった95xxといったサーバー
機がジャンク屋に並ぶ事もありますが、素人には敷居が高
いマシンです。

パソコンは仕事のツールであり、過去に固執する訳には
いきません。確かにMCAには大変にお世話になり、また、
誇りにしてきました。しかし、当時の時代先取りも今の
時点では取り残されたテクノロジーです。私は過去の記録
を収録する事にはこだわる方ですが、製品自体を工夫して
使う事には無頓着です。古くなればある程度はパワーアッ
プしますが、これだけ新品価格が安くなってきた今では
そういう創意工夫は時間と費用の面でかつてほど効果が
上がらなくなっています。

IBM PC300/700シリーズはその後、1997/04にIBM PC300PL
/GLシリーズとなり、更にPC300PLシリーズは2000/07にNet
Vistaに衣替えしてしまいました。

 http://www.jp.ibm.com/NewsDB.nsf/2000/07121
  中小規模のネットワーク環境に最適な企業向け低価格ノートPCを発表
  液晶一体型PCとデスクトップPCも同時発表

1992/10月以降続いてきたThinkPadに比べるとIBMのデスク
トップ分野での迷走振りがよく現れている気がするのは私だ
けでしょうか。市場に定着できずに、数年毎にシリーズを一新
して立て直しを図るというのが見え見えです。

旧マルチステーション5550からPS/55への切り替えの時の
ようなハードウェア資産の引継ぎに問題が無いのが救いと
言えばそうなのですが。


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