新TPiシリーズ

不定期コラム Vol.48 Rev.B
2000/06/01更新

本業でちょっとやばい状態になったので更新が遅れ
ました。すみません。新TPiモデルについて、少し
考えてみたいと思います。

今回の発表の内容
・ 個人向けモデルのブランド統一
・ TP240後継のTP240X相当のTPi1124
・ TP570後継相当のTPi1157
・ エントリーモデル兼意欲的、VAIOライクなTPi1200
・ といった内容です。

カラーリングを現行のTPi1400シリーズと共通化し、
個人ユーザーの選択肢を増やしたという訳です。

プレス・リリース
http://www.jp.ibm.com/NewsDB.nsf/2000/05302

登場の背景
従来のTPi1465/1486とはコンセプトが違うので、新
機種へ切り替えというより、モデルの追加による選
択肢の増加、という事のようです。

最近のインターネットブームに代表されるパソコン
市場の伸びは、個人向け市場が牽引車となっていま
す。この市場ではIBMは劣勢です。ソニー、NEC、富
士通、シャープといった強敵がいます。企業向けま
で含めればTPも有力メーカーだと思いますが、個人
向け市場に関しては歯がゆいほど駄目です。

情けない予告広告
一つには、社名がビジネスマシンからきているよう
に、コンシューマー向けというのが苦手、というの
があるかもしれません。長年家電でコンシューマー
向けへのマーケティングに慣れているSONYと比べる
と、何かとおそまつさが目立つ、あるいは、目立た
ない状況です。

例えば、今回の新製品の予告広告の問題です。
SONYの予告広告は例えばPC WATCHあたりでも取り
上げて話題になるのに、今回のFLASHを使った予告
広告はThinkPad Clubはともかくとして、一般には
全く知られていなかったようです。

5/30にアクセスしろ、と言うので、それこそ真夜中
の0:00から朝の7:00,8:00,9:00と何回もアクセスし
ましたが、一向に更新されないので、最後は飽きち
ゃって見もしませんでした。常時接続なのでやたら
と更新してもビクともしないサイトは頑丈なのか、あ
るいは大してアクセスされなかったのか。

11:00過ぎになってThinkPad Clubの管理人の方から
発表があったという書きこみがあるまで判らず、しか
も、WEBサイトの方はずっとそのまま。最終的にいつ
更新されたのかは、馬鹿馬鹿しくなって見てないので
判りません、というのが、期待させた05/30の惨状で
した。

WEBサイトを使ったマーケティングをするのであれば
もっと機敏に動いて欲しいものです。過去は11:00に
製品発表があったという事で網を張っていたThinkPad
Clubの管理人もお見事ですが、IBM時間というのでも
あるのか、引き付けておいて空振りさせるのは稚拙な
やり方にしか思えません。WEBサイトで動き出したの
なら、もっと機敏に動いて欲しかったです。あれでは
やっぱり駄目ねぇ、IBM、という印象を逆に植え付けた
可能性すらあります。

情報の伝達にも少々問題があるようです。
ThinkPad Clubのログにもありますが、どうもTP240
X(&TPi1124)をAGP接続と報じたらしい、とか、一部
の新聞では全機種IEEE1394搭載と記載されたりしま
した。プレスリリースは間違い無いので、受け取っ
た記者が縮める際に間違えたのだとは思いますけど。

対SONY新規巻き直し攻勢にしては、ちょっとアラが
目につく滑り出しです。

機能不全の直販
PC Direct[ThinkPad購入]では現在も新機種の影も
形もありません。図体がでかい企業とはいえ、小回
りが全然きいていません。発表から大分経っている
TPi1486がようやく6月上旬から予約開始というぐらい
なので、正直e-businessの看板が泣きます。どうせ
店頭シェアなんて無いのですから、変に数少ない国
内営業を気にするよりは、思いきって直販やるぞ、
という風にした方が良かったと思います。現状では
直販もやってます、程度です。
                    IBM PC Direct

モデル分けの是非
今回の統合で個人向けモデルはThinkPad iシリーズと
なった訳です。個人向けモデルについては、TP315系
やTP385系といったマシンの流れを統合してTPiという
ものを作りました。TPiは、据え置き用途主流でコスト
重視、初心者向けというマシンでした。OSもWIN98だけ
で、赤外線は無し(まぁこれは私も無くてもいいかな
とも思いますが)、計画数量だけを生産して売りきると
いう体制等が特徴でした。

TPiは価格の割には大画面で、法人ユーザーの私から
しても魅力的でした。恐る恐るですが、10台以上は
導入しています。LAN接続も問題無く動いています。

TPの個人向けモデルとしては、それ以外にTP600の26
45-53Jに始まる店頭向けモデルがありました。幾分
低価格で出していたモデルです。TP570以降ではCele
ron搭載モデルが個人向け、PentiumIIが法人向けとい
う感じでモデルが投入されていました。

エンドユーザー側の方から見ると、こうした売り方は
秋葉原の量販店と取引している限りにおいては全く
無意味でした。大手特約店のハガキが同封された状態
で届いたりするので、個人向けモデルが法人向けも
やるような大手ディーラーにも流れ込んでいることが
判ります。過去のキヤノン販売との手切れが響いてい
るのでしょうが、LAOX、T-ZONEといった大手はともか
くとして、地方の主力店の店頭にマシンを送り込むパ
イプはうまく機能していないように思えます。

IBMの方でセグメントを分けて投入しているこれらの
個人向けモデルですが、私が取引している、あるいは
ThinkPad Clubの価格情報でしばしば登場するような
お店は全国向けの通販もやっていますから、エンド
ユーザーとしては、どちらのモデルでも入手可能な訳
です。形骸化した店頭向けモデルという現状がそこに
あります。

コンセプトは明快か
従来のTPiは明確に据え置き用途のオールインワンと
いうコンセプトがありました。その強烈な個性故に
TPは置いてなくてもTPiは何故か一台だけ置いている
という私の自宅近所のJ&Pといった状態も可能にする
力を持っていました。

伸び盛りの個人向け市場において、TPiに続く玉が欲
しいというのが、多分今回の新TPiシリーズでしょう。
これらモデルも従来のTPiのような明快なコンセプト
を持っていれば、少しは店頭シェアを回復できるかも
しれません。

ウリ(長所)は継承されたか
TPの真骨頂とは
企業ユースに耐えうる堅牢さ、シンプルなキーボー
ド、充実したBIOS/ドライバの供給、保守体制です。
逆に従来のTPiはどうかと言えば、大画面とPC Care
です。

今回の新TPiのうち、まんまTP240X/570E?の1124/1157
は両方の長所を継承できているのでしょうか。

会社で従来のTPiシリーズを設置するときも、EZアクセ
スボタンは飾りだから気にしないでね、としてきました。
多少キーボードが変わっても目くじらをたてるつもりは
ありません。そんなキーボードを要求するユーザー層が
存在することは判りますから。それが使い物になって、
また、サポートの手間の省略に貢献するかについては、
個人的にはどうだか、という気もします。けれども他社に
も同じようなのがあるのでしょうから、これは競走上、仕
方ないと思います。

良い製品を出せば売れる、というメーカーの論理から、
たとえ堕落と言われようとマーケットオリエンテッド(市場
志向)なやる気をみせたことは評価したいと思います。
無論、従来のTPを愛するユーザー層には総スカンかも、
という気はしますけど。

反発を封じるには従来路線のモデルとに明確なメリットが
あるか、ですが、定価で1.1万円程度の差が実売でどの程
度の差が付くか、ですね。予算のためなら多少我慢という
人もいるでしょうし。P3とCeleronの差はベンチマークはとも
かくとして、普通の使い方であればそれほど差はないはず
ですから。

TPi1400で評価が高かったPC Careの継承が新シリーズ
でどうなっているかはよく判りません。個人で負担するには
結構思いきりが必要なEMS(拡張保守)が実質的に下がる
のであれば、キーボードの好き嫌いを超越して従来のTP
ユーザーを惹き付ける可能性もあります。この点に対して
の明確な説明が無いのが残念です。

新しいウリは
添付されたデジタル・ビデオ(DV)編集ソフトはどれだ
けメリットがあるかは、私がDVを持っていないので判
りません。持っている人にはそれなりに効果があるの
かもしれませんが。問題は単にソフトを添付するだけ
でなく、具体的な使い方の提案なり、コンテストとい
ったものを通じた使い方の啓蒙、WEBサイトの活用と
いったものが今後の課題でしょう。それ以外のウリが
あるかは、まだ明確に見えてきません。

自分がシンプルなキーボードしか使わないこともあっ
て、追加されたEZボタンは個人的には不用です。で
も雑誌の評価記事で、Windowsキーが装備されていな
いことで評価をマイナスにするようなライターがいる
ことを考えると、キーボードの他社並みというのも
品揃えの一つとして必要なのかもしれません。

ビジネスユーザーとしては
従来のTPi1400は低価格で大画面と言うのがウリでし
たので、あまり使わないエグゼクティブ用に導入し
ました。今度の新モデルは1124/1157は実売価格に差
があれば考えても良いですが、1200はちょっと身構え
てしまいます。SHARPのメビウスのIEEE1394標準搭載
のモデルでLAN接続がPC CardにしろUSBでも不安定
だったので。余計な装備があるのはなるべく避けたい
ので。遊びに使うには面白そうなマシンではあります。

それより、新型になったTP240Xはともかく、TPi1157
相当のTP570E(あるいはZ?)といったビジネスモデル
は登場するのでしょうね? でないと怒ってしまい
ます。この点についての明確な意向表明が無いのが
心配です。

でも、もしTPi1157相当のビジネスモデルが投入され
量販店で安価で出まわる構造が変わらないのである
なら、最悪は混乱の元になるだけ、うまくいけば、
従来のTPユーザーと、それで掴みきれなかった新規
ユーザーの両方を確保でき、シェアを向上すること
が可能かもしれません。

従来の日本専用モデルへのドライバ、ユーティリテ
ィのFTPサイトでの提供の遅れを考えると、うかつに
TPi1200に手を出すのもちょっと怖い点があります。
米国でも販売されれば安心なのですが。

あと、商売柄明言しにくいのでしょうが、TPiはWIN
98SEしかサポートしないのであれば、そう明記すべ
きでしょう。なまじWinodws2000にも対応可能とか
WEBサイトでWindows2000対応のユーティリティが登
録されるのは混乱の元のような気もします。スキル
がある人間は自力でどうぞ、という事かもしれませ
んが。

法人ユーザーとしては、やはり色々なOSへの対応を
要求しますし、そういう意味でTPi1157相当か上位
のモデルがでないなんてことはないと信じています。

どこが違うの
単に色を変え、キーボードを変更しただけの色物モ
デルで終わるのか、新しいユーザー層を獲得できる
か、は夏のボーナス商戦を見るまでは判りません。
既存TPを好むユーザーの離反を防げるか、という問
題もあります。

大して違いが無いのなら、メーカーの考える個人向け
モデルの存在する場所があるのかどうか、が問われ
なければなりません。

ビジネスモデルとの競合
法人向けモデルが無いモデルならともかく、法人モデ
ルが存在する1124、きっと出てくるはずの1157が本当
に品揃えとして必要だったのでしょうか。この程度の違
いでは私は疑問に思います。

従来のTPユーザーは使い方を限定されたものより汎
用性を好みます。Windows98SEしか公式にはサポー
トされないモデルよりは、NT4,Windows2000(W2K)とい
ったものがサポートされるものを選択するかもしれませ
ん。TPiにもW2K、あるいはLinixといったメーカー想定外
のものをいれようとするかもしれません。

メーカーが想定している通りに、WIN98SE ONLYユーザ
ーを1124、W2K/Linuxまでやる人間をTP240Xという具
合にうまくユーザーを誘導できるのでしょうか。また1157
相当の汎用性を持ったモデルが出なければ、みすみす
中堅以上のユーザーを引き留めることができなくなります。

住み分けは可能か
メーカーが想定する個人ユーザーとは何なのでしょう。

従来のTPのドライバ、BIOSの更新の早さ、保守の確か
さを評価するユーザーに、あなたは個人ユーザーだか
ら、TP240Xを買うより、OS限定の1124を使ってね、では
筋が通らないと思います。

従来のTPの路線を求めるユーザーにはTP240X、初心
者でよく判らないので初心者用モデルのTPiでいいや、
あるいは、一番安い物を、という人間はTPiを、という住
み分け、相乗効果が生まれるように、明確に情報を発信
し、マーケティングも分けて行うといった工夫をしなけれ
ば、製品は用意しました、だけに留まり、ビジネスモデル
と個人向けモデルが量販店の通販経由で並べて売られ
る現状は変わらないでしょう。それを防ぐために、ビジネ
スモデルのモデルや販路を絞るというのは、それはそれ
で自殺行為でしょう。

新しいTPiで狙う対象は、私が思うに、従来のTPを支えて
きた、堅い支持層ではなく、浮気性のいわゆる浮動層の
ユーザーです。TPの本質的な良さを知らない、または、理
解してくれないユーザーです。このユーザー層からの支持
を獲得するだけの魅力を新TPiの1124/1157を持つか、に
ついては私は半信半疑です。なんといっても、ビジネスモデ
ルとの明確な差が把握できないからです。でも、今までTPi
1400を一台だけ置いてくれていたお店が、顧客の選択肢を
広げるためにシリーズで置いてくれるのなら、少しは効果が
あったことになります。

私が売り手の立場なら、ビジネスモデルにないTPi独自モデ
ルの1200に注力すると思います。画面は狭いですが、色々
と面白そうで価格も安そうですから。他はどうでしょうね。他
に本当に選択肢が出てこないのら1157も薦めます。1124に
TP240でも獲得できなかった初心者が獲得できるとは思え
ません。結局、従来個人でTP240を買っていた層がTP240X
が高いので1124を買うだけで、トータルでパイが増えるという
のはどうだか。1157は1400との差別化の問題が発生する
と思います。まぁ全て、お店が置いてくれるようになってから
の話です。

お店は置いてくれるのか
考えてみたら、お店も狭い展示面積をTP、TPiと両方置くこと
はできないでしょうから、LAOXコンピュータ館程度ならとも
かく普通のお店でTPを置かなくなることもあります。実物は
置かなくてもインターネットを使った通販でカバーすることは
可能です。ただ、TPのキーボードの良さを店頭で確認しても
らう機会が少なくなるのは残念です。1124/1157といったモデ
ルのキーボードがビジネスモデルとかけ離れた仕様になって
いなければいいのですが、これはまだ確認できません。

お店に展示しきれないこと、お店のマインドシェアが失われて
いることを考えると、IBMによる直販の強化を早急にやっても
らいたいです。

上記とは矛盾しますが、平行して、新規に買おうというユーザ
ーが実物を触れるような実機の展示スペースの確保も多少
販促費用がかかってもやるべきです。TP(TPi)の良さは価格
だけでは見えないところにあるのですから。

一時期やっていたIBMの社員の店頭派遣を最近はやってい
ないようですね。現実の凋落の現状を把握できていますか。

三大電気街におけるプレゼンス、及び、お店のマインドシェア
の確保にもう少し気を配ってもらいたいものです。維持に金が
かかるのであるなら、いっそ思いきって直販に注力すべきです。
現状は売る気があるのかないのか、どっちつかずの状態では
無いでしょうか。大手量販店にあるだけなら、それはそれで構
いません。SOTECにスペースを押し出されないように努力して
ください。ここに行けば必ず買えるという状態を保持してください。
従来の1400シリーズは計画生産が徹底していたので物不足も
結構起きています。今度のはどんな生産体制ですか。

カラーリング
従来の黒のイメージに対する多少の変革としてのTPi
1400の2621モデルから採用されたツートンカラー、ブ
ラックメタリックですが、それほどのインパクトは無いと
感じています。やはり、それこそAptivaNoteを思わせ
るような色使いで勝負してもよかったのではないでしょ
うか。あるいは直販だけ色違いモデルを出すなり、最
初からカバーを付けたモデルを用意するとか。

TPとTPiでずばり違っている、新しいのが出たというイ
ンパクトは感じられません。既存のユーザーも横目で
にらみつつ、少し冒険やってみました、的なボディカラ
ー変更だと、新しいカラーリングが登場した時から感じ
ていましたが、今度のもなんだかなぁ、です。VAIO登
場以降のマスコミのTPへの冷遇を跳ね返すものは無
いようです。以前IBMのプライベートショウでやっていた
WorkPad特別塗装のようなのでもやってみたらどうでし
ょう。

今回は70点
色々書きましたが、とにもかくにもドタバタながら
新しい動きを見せた日本IBMの動きを今後とも注目
したいと思います。総じて商売、マーケティングが
下手だなぁと思いました。己の筋を貫き通す武家の
商法もまたいいんですけどね。TPiのことは切り離して
考えますので質実剛健、頑固なTPのイメージだけは
守り抜いてください>IBM。将来への期待をこめて、
今回のイベントは70点というところでしょうか。


一つ前へ
一つ後へ
コラム Indexへ
トップページへ