T30 開発レポート要約
不定期コラム Vol.700
2002/05/31作成
2002/05/31 日経産業 9面 開発レポート 日本IBMの小型ノートPC
以下、要約です。
T30:Pentium4を搭載したマシンとして5/30時点で世界最小・最軽量。
●企業向け需要を開拓する旗艦モデルとして位置付け、サイズだけでなく
頑丈さやモバイル対応、セキュリティーでも最新鋭の技術を盛りこむ。
●Pentium4の発する「熱」処理が最大の問題。
・限られた寸法にかさばる大型のファンは搭載不可。
・基盤設計の段階で「個々の部品をどう配置するかが大きなポイント」」
・発熱で周囲の部品に影響しないよう、MPUをパソコンの外枠に接した
結果、設計の自由度が狭まり、搭載する部品の寸法を測りながら本体の
寸法を修正する従来の手法が使えず→専用ソフトウェアでデザインでき
ず、設計者の手作業で補う。
●ビジネスマンを主要顧客とするためのデータ消失防止
・物理的衝撃をうずら卵を半分に切った形の緩衝材を底面に貼りつけ克服。
・置いた瞬間に空気が抜けるので文字入力時にKBが揺れない
●「ホットポイント」での盗聴防止。
・暗号処理用プロセッサーの「セキュリティチップ搭載」
・米シスコシステムズのワイヤレスLANシステムを新たに採用。
・個々のユーザーに毎回異なるキーを新規に作成し、データ盗聴の危険を減少。
・都内にある全部のホットポイントでの動作に問題が無いかを調べ上げ。
●ユーザーの要望に応え「トラックポイント」に加えタッチパッドも採用。
・パッドの四隅を指先で軽く叩くと、各種ソフトの呼び出しができるなどの
機能を盛りこむ。営業マンが現場でプレゼンをする際に素早く操作可能。
●「ソフト・サービス」路線で復活した米IBMだが
「技術に立脚したモノづくりの力がないと顧客を満足させられない」と取締役。
●世界最小。最軽量という明快な商品企画を支えた多くの要素技術は、
モノづくりの大切さを再認識したIBMの新たな一歩 (ここまで)
フラッグシップはそれなりに手間がかかっていて、高価でも許される
でしょう。問題は量販モデルというか、下位モデルで同じようにでき
るか。ですね。今時、相応の価値の無いモデルに大金を払うユーザー
はいません。高くても売れる一部モデルだけでなく、それなりの性能と
品質、価格のマシンを用意できてこそThinkPadの最近の悪評は払拭でき
るでしょう。
良いものを作れば、少しは売れますが、数を売るのはやはり価格も
重要です。それは非価格競争力が強いと思われるIBMでも。
今後はしっかり対策していかないと、待っているのは誰も買ってくれない
孤高のマシン、昔のDEC Ultra Hinoteの二の舞という結末だけでしょう。
セルシオだけ売るのでなく、カローラ・クラスにも手を抜かないで
頂きたいものです。「コスト」というものに対するIBMの真の競争力が
問われています。どんなにモノが優れていても「悪貨が良貨を駆逐する
」傾向はあります。むろん悪貨にも程度があって、ソーテックなんて
のは論外ですけど、ね。「信者」「擁護者」が減りつつある中、定評ある
「ThinkPad Quality」「ThinkPad伝説」で支えられた「非価格競争力」に
陰りが出ています。いつまでも「殿様商売」したければ、量販モデルに
到るまで品質に手を抜かず、評判を回復しろ、です。しくじれば言うまで
もありません。2ちゃんねるの風評だけで一気に失速することはない
でしょうが、説得不可能な確信犯の欠点あげつらいには、論より証拠
で対抗するしかありません。
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