ドット抜けII

定期コラム Vol.140
2000/09/23更新

ボス電2ではありませんが、続編です。
ThhinkPad Clubドット抜け論争も一段落したようです。
前回(Vol.127)以降で入手した情報や感想などつらつらと。

液晶のドット抜けは英語では"pixel defect"というそうです。
米YAHOOや米IBMで検索してもあまりヒットしませんでした。
米向け製品はドット抜けが無いのではなくて、市場があまり
こだわっていない点の反映だと個人的には思います。

米で結構返品制度が有効だと聞いています。でも日本で発生
しているクレームに全部海外で対応していたら、あの裁判が
好きな国ですからただでは済まないでしょう。

海外でもあの"高度な技術で製造され、膨大な数のトランジ
スタからなるTFT LCDのpixel defectは製造上の問題で回避
できない"と書いてあるかは調べたけど判りませんでした。

日本は今でも世界一品質に厳しいユーザーが多い国だと思い
ます。レガシーインターフェイス(パラレルやシリアル)、
PC CARDの蓋が取り外し式であることを嫌がるユーザーも結構
います。私にとっては、ほとんど、どうでもいいや、という
事項なんですけどね。前回も書いたけど、目の前の小さな斑点
の数に一喜一憂するより、いかに使い込むかにエネルギーを
向けた方が健全だ、というのは変わっていません。

ドット抜けを完全に無くすには出荷前の点検をしっかりやれば
多分可能でしょう。しかし、そのチェックもなかなか大変です。
常時おかしいだけでなく、特定の背景の時だけ出てくるような
場合もあったりしますから。数多くのマシンのセットアップや
メンテナンスをしているとおかしいと思うのもよく目にしますが
実用上は問題無いと判断してそのままにしています。

ドット抜けに関する書きこみでも時間とともに増えた、という
話もあり、出荷前の検査を厳しくしても全ては防げないように
感じています。統計的に傾向が判断できれば保険というのも可
能かもしれませんが、実際に保険を設けるのは難しいと思いま
す。携帯も想定しているノートパソコンでは携帯時のストレス
による原因というのも想定できるからです。

初期出荷を厳しくすることは、イコール、利益にならない製品
を抱え込むことになります。特別の出荷基準を満たしたものを
ThinkPad(TP) Extraシリーズとして出荷し、基準落ちしたもの
をTP Valueとし、価格に格差を設けることで机上では解決でき
なくもないのですが、高い方ばかりに注文が集中した場合に歩
留まり、納期等で問題が起きる可能性があります。また、高い
方を選択したユーザーほど注意深い訳ですから、経年劣化によ
るトラブルにも当然クレームが殺到するでしょう。対応を誤れ
ば結果的にブランドイメージの失墜にも繋がります。結局、間
尺に合わない商売になる可能性が大です。

デスクトップPC用の外付けLCDは15"で大勢は決したようです。
今後特殊用途向けに17",18"クラスが使われることがあっても
実用上は問題が無い15"XGAで大量生産と低価格化が進む
のでしょう。ノートでも14.1"XGAでしばらく仕様が固定されれば
生産歩留まりが向上し、ドット抜け減らしの努力も効果を発揮
するかもしれません。

でも海外のことは判りませんが、液晶ディスプレイのドット抜
けへの厳重な対応が日本国内モデルの価格を国際的に割高
にするのであれば、そのようなこだわりは生産量が少ないメーカー
に任せて、判るユーザーだけにリーズナブルな価格で提供する
路線をとってもらう方がありがたいです。

価格差を設けても、というあそこでの結論的なものに関しては
経年劣化、使用環境による変数から採算的に難しいのでは、と
いう感想を挙げておきます。

それでも、コンシューマーの要望に応じて直販で出荷するDELL
流の出荷方法をIBMが採用できれば、最終念入り出荷時検査料を
上積みして徴収することで、少ない数だけ念入り検査して、最低、
初期出荷状態でのドット抜け無しモデルを提供できる可能性は
あると思います。ただし顧客が呑める上積みがIBMの採算に
合うかは未知数です。

ネット上でも色々と調べてみましたが。ドット抜けへの対応で
融通が一番効かないのはVAIOのようです。けんもほろろのよう
です。ユーザーの悲嘆の声が大きいのは個人的にはMACですね。
日経の雑誌の記者ですら驚いたような話があります。完全無欠
といった思い入れが強いのでしょうか。IBMとシャープは位置と
数によっては、という対応です。他はあまりヒットしませんでした。

IBMが声を大にして、ノートパソコンのTFT LCDにはドット抜け
という避けられない問題があって、それは運任せだ、とアナウ
ンスすることが、顧客サービスのために良いことなのかは私に
は判断しかねます。正直者は馬鹿を見る事態になりゃしないか、
と。買う前にキチンと説明する責任は個人的にはメーカーより
販売の第一線の問題だと思います。経年劣化もある事だし、
変に無謬幻想を抱かせない方が良いとは思いますが、どの
レベルなら交換可能(お店が無理ならメーカーで)という基準の
公開が遅れている点は認めざるを得ません。少しでも交換件
数を少なくしたいという思惑があるのかもしれませんが、下手
すると三菱のリコール隠しのようにもなりかねません。

なお、色々な情報の中で、液晶ディスプレイのバックライトの
交換はゴミの混入を防ぐためにそれなりの設備(クリーンルーム
)が必要だとか伝わってきていますので、液晶パネル自体を他の
同じモデルのジャンク機から持ってきて付けかえることはでき
ても、バックライトの交換は個人では難しそうです。


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