PS/55Zの歴史

不定期コラム Vol.514
2002/01/03作成


日本IBMの大昔の主力デスクトップPC、PS/55に関する資料です。
古い資料を引っ張り出したついでに。NIFTY時代に途中まで作成していたものを
そのまま載せています。一度に全部載せるのは大変なので、何回かに分けて
(時間的にも)収録します。この資料の前の時代の資料、マルチステーション5550
についても後日収録しておきましょう。テキストだけなので楽は楽なのですが、
半角カナの多用とか、空白の扱いとかで一度にHTML化するのは大変なので
今年一年の中でやるつもりです。最後の頃にはIBM PCについても。これもNet
Vistaに代わってしまいましたね。ホント、デスクトップはシリーズ寿命が短いことで。

PS/55はさすがに私の会社でもぼちぼち退役が始まりました。暇を見てデジカメで
画像は撮っておくつもりです。ただ、本当に古い機種は既に廃棄してしまっている
ので図鑑的なものは残念ながら作れません。カタログは取ってあるのでスキャン
すればいいのですが容量の問題がありますし。

   PS/55資料館 へ


今回はPS/55Zについて載せています。


%0001  1- 0 PS/55 BASIC GUIDE V0.7 55_BAS07.TXT
%0005  1- 1 始めに
%0010  1- 20 PS/55,PS/55Z シリーズ
%0015  1- 21 PS/55Z シリーズ
%0020  1- 23 PS/55Z シリーズ 仕様 リスト
%0030  1- 30 PS/55Z 機種別インプレッション
%0040  1- 31 5510Z
%0050  1- 32 5510S
%0060  1- 33 5510T
%0070  1- 34 5530Z(286)
%0080  1- 35 5530S(5530Z-SX)
%0090  1- 36 5530U
%0100  1- 37 5530U-SLC
%0110 1-40 PS/55Zの価格


%0001  1- 0 PS/55 BASIC GUIDE V0.7 55_BAS07.TXT

%0005  1- 1 始めに

私は日本IBMのパソコン、マルチステーション5550以来のIBMのパソコン
のユーザーでもあり、心情的にもかなりIBM寄りでした。これは別にビッグ
ブルーとしての日本IBMにひかれていた訳ではなく、IBMのPS/55というパソ
コンの持つMCA(マイクロ・チャネル・アーキテクチャー)にべったり惚れこ
んでいたせいです。 しかし、時の流れはこの業界では特に速く、残念なが
らMCAはIBMでもラインナップを縮小されてしまい、また、永い間、慣れした
しんできたPS/55というシリーズも終了してしまいました。

しかしながら、今なおMCAに係わって仕事やホビーにMCAを使っているユー
ザーはNIFTY FIBMJ MES( 4):PS/55 & PS/2 (MCAフリークの部屋)を中心に
確認する事ができます。

私自身は今、会社のマシンの脱MCA化にやっきになっている毎日ですが、
これからもMCAを使い続けるMCAユーザーのために、また、こうやって過去の
資料をまとめるのは、MCAと共にスキルアップしてきた自分の歴史を確認
する事にもなるという事で、資料をまとめてDLにアップロードする事にし
ました。悪く言えばこれでMCAと手切れしようという訳ではあるのですが(^^;

現在のところ、仕様をまとめた基礎編         55_BASxx.TXT
グレードアップに関するパワーアップ編として
CPU篇,SIMM篇,HDD篇,VIDEO篇,その他 を考えています。
分量が多いのでお手数をかけますが、上記のような形で分割して
アップロードしたいと思います。


%0010  1- 20 PS/55,PS/55Z シリーズ

PS/55シリーズは1987年に登場しました。当初はマルチステーション5550
シリーズのものが米IBMのPS/2登場と期を一にして名前を変えたようなもの
でしたが、徐々にMCA(マイクロチャネルアーキテクチャー)という(当初)32
ビットバス搭載マシンに切り替わり、1991年に完全に切り替わったようです。
主に大企業中心に使われたマシンだと思います。
これとは別にPS/55Zという個人向け市場を狙ったシリーズも1989年秋に
5530Z-SXとして発表されました。このシリーズは後に1992年秋に登場した
PS/Vに取って代わられました。

PS/55はパソコンの用途拡大とかで、グリーンPCのPS/55E(後のPC Stream)
やPS/55 Server(後にPC Serverへ吸収)といったシリーズを生み出しました。
携帯型マシンも当初はPS/55note(後のThinkPad)という名称でした。
1995年のIBMの製品系列整理により、IBMのメインのデスクトップ製品は
ATアーキテクチャーをベースにした(新)IBM PC に統合され、MCA系統は
過渡的にIBM PC720に採用モデルを残し、今ではIBM PC750シリーズに高価
な1モデルを残すのみです。

なお、PS/55の前身モデル、マルチステーション5550については、
FIBMJ DL4:PS/55 & PS/2
#19 55&JX_09.LZH 前史(5550&JX&TERA) Ver.0.9
で、簡単にまとめてありますので、興味の有る方は参照してください。


%0015  1- 21 PS/55Z シリーズ

PS/55Zは日本IBMが個人向け市場攻略のために企業向けのPS/55とは別に
1989年に出したシリーズです。一般市場向けにi386SX搭載の5530Z-SX(5530S)
が売り出される前に、新学社ルートで5530Z(80286)というモデルがパイロット
販売され、それを元に改良されて出てきたのが5530Z-SXでした。巨人の藤田
監督がCMに起用された事もあったと思います。

製品政策としては当初、JDOS4.0ベースの24ドット表示の高解像度を前面に
出した戦略から、1990年に登場したDOS/VとWINDOWS 3.0の登場で、DOS/V路線
へと振れました。5530SではDA-VIだったディスプレイアダプタが5530UでXGA/A
となったのは、その現れだったのかもしれません。WIN30路線用は1991年に
5530U,5510系が発表されました。

MCAマシンの5530はともかくATバスの5510Z/Sも思った程コストパフォーマン
スが良くなく、1992年秋にその挑戦はバリバリの486マシンでオープンなパー
ツ構成のPS/Vシリーズへと引き継がれました。
5510Z/S/Tと5530S/Uの各シリーズが有りました。

商品発表時期は
1989.11 5530Z-SX
1991. 5 5510Z/T
1991.10 5510S,5530U
1992. 6 5530U-SLC
1992.10  初代PS/V
 というような具合になります。

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%0020  1- 23 PS/55Z シリーズ 仕様 リスト

   [PS/55Z]
    Model      CPU   RAM MAX VIDEO FDD HDD Type MCA Ful Hf  BAY IML
   5510 Z02/ZJ2  286-12  1   5  VGA   2   0  AT   3  -      0 
     Z04/ZJ4     ↓    1   5  VGA   2   40  AT   3  -     0
   5510 S01/SV1 386SX-16 2   6  VGA   3   0  AT   3  -      2
     SV4        ↓    2   6  VGA   3   40  AT   3  -      2
     SW4        ↓    6   6  VGA   3   40  AT   3  -     2
   5510 T04/TJ4 386DX-20 2  14  VGA   2   40 ESDI 32  2  -   1
     T08        ↓    2  14  XGA   2   80  ↓  32   1  -   1
     TW8        ↓    6  14  XGA   2   80  ↓  32   1  -  1
   5530 S02     386SX-16 2 16*1  DA   2   0  ESDI 16  16x2    1
     S03/SJ3     ↓    2 16*1  DA   2   30  ↓  16  16x2    1
     S06/SJ6     ↓    2 16*1  DA   2   60  ↓  16  16x2    1
     S12         ↓    2 16*1  DA   3   0   ↓  16  16x2    1
     S14/SJ4     ↓    2 16*1  DA   3   40  ↓  16  16x2    1
     SW4        ↓    2 16*1  DA   3   40  ↓  16  16x2    1
   5530 U01     386SX-20 2  14  XGA   3    0 ESDI 16   2 1    2
     UV1        ↓    2  14  XGA   3    0  ↓  16   2 1    2
     UW4        ↓    6  14  XGA   3   40  ↓  16   2 1    1
     UW8        ↓    6  14  XGA   3   80  ↓  16   2 1    1
5530U-SLC UA1 IBM386SLC-20 2 14  XGA   3    0 ESDI 16   2 1    2
     UA4        ↓     2  14  XGA   3   40  ↓  16   2 1    1
     UAW        ↓    6  14  XGA   3   80  ↓  16   2 1   13

     *1:S02/S03/SJ3/S06/SJ6はシステムボード上で4MB
      S12/S14/SJ4/SW4はシステムボード上で6MB
     *:5510系はCRTと別体型、5530系はCRT一体型です。


%0030  1- 30 PS/55Z 機種別インプレッション

%0040  1- 31 5510Z

CPUに80286-12搭載の廉価機でした。FDDモデルで\198,000という
とにかく低価格を実現したモデルです。しかしFDDモデルでは
HDDが内蔵できなかったり、ビデオがVGAのみとか、使い勝手を
考えると当時としてもあまり魅力的で無かったように思えます。
ISAバスを採用していましたが、HDDモデルのHDDは非IDEの特殊な
ものだったようです。DOS/V専用モデルで、KBは5576A01が付属して
いました。SIMMは30ピンの独自のものでMAX 5MBでした。
詳しくはFIBMJ DL4 #15 Z10L_10 .LZH 5510資料集 Ver1.0を
参照してください。


%0050  1- 32 5510S

CPUは80386SX-16と、先に発売された5530Z-SX(5530S)と同様です
がバスはISAバスです。PS/V登場前のOADGのリファレンスマシン
とも言えるマシンでした。ビデオはVGAのみでした。SIMMとかでも
汎用品が使えず、DOS/Vのメリットであるオープン性に劣りコスト
パフォーマンスが悪く、真のオープンなマシンはPS/Vの登場を待
つ事になります。なお、DOS/V専用モデルで、FDDは3モードでした。 
KBは5576A01が付属していました。SIMMは30ピンの独自のもので
MAX 6MBでした。
詳しくはFIBMJ DL4 #15 Z10L_10 .LZH 5510資料集 Ver1.0を
参照してください。


%0060  1- 33 5510T

CPUは80386DX-20で、PS/55 5540Tとマザーボードが同じという
5540Tの兄弟モデルでした。拡張バスはMCAで、HDDは当時のPS/55
と同じESDI(DBA2)、ビデオにはXGA/A搭載モデルも設定されました。
MCAマシンの宿命でコスト高傾向は否めず、製品のコンセプトは
PS/Vへと受け継がれました。5510シリーズで唯一OS/2の稼働がサ
ポートされていたようです。基本的にはDOS/V用モデルで、JDOSは
動きません。FDDは2モード(オプションで3モード増設可)で、
KBは5576A01が付属していました。バスはPS/55Zで唯一の32ビット
MCAでした(他は16ビットバス)。SIMMは同時期のPS/55と同じ72ピンの
独自仕様のものでMAX 16MBでした。
詳しくはFIBMJ DL4 #15 Z10L_10 .LZH 5510資料集 Ver1.0を
参照してください。

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%0070  1- 34 5530Z(286)

CPUは80286の12'CRT一体型のモデルで、1988年春に発表されたようです。
家庭市場向けにマシンを投入する前に、IBMが新学社向けにPS/55Zの
パイロットモデル的に開発したマシンです。教育市場経由で一般市場にも
少し流れたかもしれません。外見は後に続くPS/55Z 5530Z-SX(5530S)と
そっくりですが、中身はいろいろな意味でひと世代前のスペック、という
話でした。XTバスのPS/2 Model 25を手本にしていたが、5530ZはMCAバス
だ、という話もありました。
基本的にはJDOSを想定したモデルで、IBMの動作保証外ですがDOS/Vも
動作可能です。ただメモリは標準の1MBより増設する必要が有るようです。
IBMに確認したところでは、動作可能のDOS/VはVer 4.xという事でしたが
EMSドライバをうまく組み込めればDOS7/Vでも動作するようです。
純正SIMMの30Zの項を参照してください。
DOS/Vで使う場合、24ドット表示が標準では使えませんし、Windows3.0
では1024x768の高解像度は使えなかったそうです。CPUが286で、Windows3.1
の386エンハンスドモードも使えませんから、WINDOWSでの使用よりもDOS
中心で使う方がいいようです。
今ではDOSのソフト自体が少なくなってなってますが、IBMのJDOSマシン
は今だ企業を中心に使われてますから、主なビジネス用DOSソフトはJDOS/
DOS/Vが同梱されている場合もありますので、ビジネス・通信系はソフトが
入手できると思います。DOS/V用ソフトでもいいんですけどね。ゲーム用は
CPUとビデオが非力ですし、サウンドのパーツが入手しにくいのでちょっと
悲しいかもしれません(AT互換機で最もパワーを要求されるのがゲームだっ
たりします(^^;)。
30Z02(FDDモデル)へのHDD接続は過去ログではパラレルポート経由ぐらい
しかムリなようです。
IBMのサービスハンドブックではZ02/09のMCAバスでサポートされている
のは2-8MB 80286記憶拡張アダプターのみだったりしますので、5530Z-SX(5530S)
以降のモデルよりも拡張には苦労が伴うようです。
5530Z-SX(5530S)と区別するために5530Z(286)、30Z(286)という表記も
FIBMJでは時々用いられます。
SIMMは5530Sのものが流用できたようですが、最大4MBで、72ピン70ns
パリティ付ですが、汎用のSIMMは使えなかったようです。


%0080  1- 35 5530S(5530Z-SX)

5530S(5530Z-SX)は1989年秋に日本IBMが個人向け市場攻略のために発売
したPS/55Zシリーズの第一弾です。CPUは80386SX-16の12'CRT一体型のモデ
ルで、前身の5530Z(286)の教訓から色々(パーツの配置、蓋の開け方とか)と
改善されていたようです。当初はJDOS 4.Oの全角文字を24ドットで表現する
1024x768の高解像度とバイリンガルOSを前面に出した売り方でしたが、1990
年秋のDOS/V登場とその後のWINDOWS V3.0の登場で、DOS/V路線へと振れまし
た。しかしSIMMがオンボード6MB程度(MAX 16MB)では非力さは否めず、1991
年6月にXGA/2を搭載しCPUを20MHzにクロックアップした13'CRT内蔵の5530U
にバトンタッチされました。バスはMCA、HDDは当時のPS/55で使われていた
ESDI(DBA2)、SIMMは72ピンパリティ付きのものですが、汎用品ではなく、
他のPS/55と同様の独自のものでした。

OSはJDOS,DOS/Vがサポートされていました。OS/2をむりやり動かして
いたユーザーもいたようです。何でもスワップの嵐とか(^^;
ディスプレイの左下にある四角い小さなプレートの中の4桁の数字とそれ
に続くアルファベットが数字の"Type XXXX-Xxx"の"XXXX-X"が大まかなモデ
ルを示しますが、アルファベットの後ろの二桁の数字が細かいモデル名を
表しますが、WType5530-SxxWのWxxWが S02/S03/SJ3/S06/SJ6ならStageI
S12/S14/SW4ならStageIIです。
StageIとStageIIでは、装着できるSIMM、CPUのUPGRADE性、装着できる
オプションとかで違いが有ります。FDDではStageIでは標準2モード(オプ
ションで3モード増設可)、StageIIは3モードFDDでした。
VRAMは標準で512KBで、そのままでは1024x768x16ですが、オプションの
VRAM(512KB)を増設する事で1024x768x256まで表示できるようになります。
StageIとStageIIでは型番が違うので注意が必要です。
なお、PS/55 5530Tと函体は同じでしたが、CPU、SIMMソケット数やホスト
接続のサポート、MCAバスのタイプ(16/32ビット)で差が有ったようです。


%0090  1- 36 5530U

5530Uは1991年秋に発表された5530Sの後継モデルで、ビデオにXGA/Aを
採用した13'CRT一体型のモデルでした。CPUは80386SX-20でHDDはESDI、バ
スはMCA、FDDは3モードFDDで、5576-A01KBが付属していました。SIMMは72
ピン・パリティ付70nsのSIMMで、基本的にはPS/55独自のものでしたが、
8MBについては汎用のSIMMが使えたようです。CPUの制限からメモリは16MB
まででした。


%0100  1- 37 5530U-SLC

5530U-SLCは1992年6月に発表された5530Uの後継モデルで、ビデオのXGA/A
等はそのままで、CPUをIBM独自開発・製造のIBM386SLC-20に換装したモデル
でした。
5530UAに搭載されているIBM386SLCというCPUはIBMが開発・製造
した386SXソケット互換のCPUですが、386SXの機能に内部キャッシュ8K、
省電力機能とかを追加してパワーアップを図ったCPUのようです。
外部バスはやはり16ビットで、メモリも同じく16MBまでです。
数値演算プロセッサーとしてはi387SXか、その互換品が使用できます。
386SLCはその後、486固有のインストラクションセットの追加と内部
キャッシュを16KBにした486SLC、更には倍クロックになった486SLC2
(内部キャッシュ16KB)と進化し、最後はIBM486SLC2-66というのがノー
トパソコンのThinkPad340CSEに搭載されました。
5530Uと同じく5576-A01 KBが付属していました。
PS/55ZシリーズはMCAを主力モデルで採用した事やSIMMも独自の物を
採用した事もあってコスト高で競争上不利だったのは否めず、1992年秋に
登場したPS/Vシリーズに取って代わられる事になります。
PS/V系については、FIBMJ DL5に資料が幾つか有るので参照してみてくだ
さい。

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%0110 1-40 PS/55Zの価格

5510Z
 5510 Z02 \198,000
 5510 ZJ2 \214,000
 5510 Z04 \292,000
 5510 ZJ4 \308,000

5510S
  5510 S01 \248,000
 5510 SV1 \264,000
 5510 SV4 \358,000
 5510 SW4 \465,000

5510T
 5510T 5510 T04 \538,000
 5510 TJ4 \554,000
 5510 T08 \628,000
 5510 TW8 \751,000

5530S
 5530 S02 \398,000
 5530 S03 \560,000
 5530 S06 \720,000
 5530 S12 \398,000
 5530 S14 \498,000
 5530 SJ4 \526,000
 5530 SW4 \609,000

5530U
 5530 U01 \425,000
 5530 UV1 \441,000
 5530 UW4 \648,000
 5530 UW8 \728,000

5530U-SLC
 5530 UA1 \540,000
 5530 UA4 \620,000
 5530 UAW \798,000


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