二番目に信頼

不定期コラム Vol.62
2000/06/16更新

私がIBMに次いで信頼しているのはHPです。

HPといってもホームページの略ではありません。
シリコンバレーの礎になったガレージからスタートした
ハイテクメーカー、Hewlett-Packardです。
もっともサーバー製品という限定的な分野だけでは
ありますが。

HP(ヒューレットパッカード)がソフトバンクと組んで個人向け
市場に乗り出す話がニュースとして流れています。

http://www.zdnet.co.jp/news/0006/15/hp.html
ZDNN 日本HPがホームPC市場に参入,今秋には直販サイトも開設

私はPS/PLAZA WAKAMATSUからHPのNetVectraを8万円ぐらい
で十数台買ったこともあります。HP製とはありますが、FICのOEM
と一目で判りました。HDDの駆動音はやたらと大きい(ケースの防
音対策不足)、ビデオのドライバは添付CDでもWEBからのダウン
ロードでもウイルスチェックソフトがインストール時に感染を警告(真
偽は不明)するなど、あまり良いイメージはありません。

http://www.1st-fic.co.jp/
First International Computer
日本エフ・アイ・シー

米IBMが利益率の低下に音を上げて撤退した米家庭向け小売
市場ではPavilionシリーズが好調のようです。このシリーズ
は古くはT-ZONE パーツショップで格安で直輸入品が売られ
ていたことがあります。

問題はHPにしろ、パートナーになるソフトバンク系の企業に
日本での小売に関するノウハウがあるか、ですね。

かつてソフトバンクはイングラムマイクロと共同でホワイト
ボックス市場に乗り出す動きを見せていましたが、これは
いつのまにか消散してしまいました。

http://www.zdnet.co.jp/news/9910/12/ingram.html
ZDNN ソフトバンク,「米Ingram Microとの提携解消は誤報」

一つは米市場の競争激化で米イングラムマイクロが撤退した
というのがありますが、問題は商品を供給できても売れると
は限らない、という点です。

ソフトバンクはソフトウェアのみならず、ハードウェアに
関しても流通大手です。ソフトウェアジャパンの崩壊以後は
独占的な地位にあります。

古いDOS/Vマガジンを見ていると、ソフトバンクが音頭を取っ
て広告を載せた推奨製品的な製品も色々ありました。どれも
これも大したヒットにはなっていないように思えます。

スーパーマーケットの世界では、メーカーがブランド力を持
つナショナルブランド、スーパーがメーカーと共同で開発か
ら手がけたプライベートブランドといった分類があるようで
すが、パソコン流通でもこの手の区分は存在します。

要は米国と日本の市場の習熟度の差だと思います。ユーザー
がノウハウを持ち、自分で色々できるのであれば、あえて
メーカー製品(ナショナルブランド)を買う必要はありません。
機能が同じなら安い方でかまわない、ということになります。
メンテナンスも自主的なものがきっと多いのでしょう。

これに対し、初心者レベルが多い日本市場で、商品は安いで
す、サポートは自力で、と言われたらどれだけの初心者が
買うでしょう。パソコンはまだ初心者には敷居が高い製品で
す。使いこなすには訓練も必要です。販売店にしても、一回
販売したら、後の面倒はメーカーがやってくれる方が手離れ
が良くて楽なはずです。こう考えると、日本でホワイトボッ
クスが売れるとすれば、価格がより重視される企業向け市場
になってしまいます。

企業向け市場でもショップの店頭と同じく価格低下が続いて
います。単なるクライアントPCの箱売りだけでは大して利益
が上がらない市場です。志がある担当者なら単なる価格だけ
ではなくて、やはりサポートの質、ロングライフ、供給能力
等をチェックするはずですので、ここでもホワイトボックス
メーカーは苦労するかもしれません。

直販メーカーのDELL、Gateway2000もホワイトボックスメー
カーとやっていることは大差ないはずです。でもこれらの
メーカーは既にブランドイメージを確立できています。ユー
ザーの忠誠心を勝ち取ることに成功しています。これさえ
勝ち取れていれば口コミでユーザーが増えていくのを待つの
も良し、勝手にユーザーは繁殖します。たとえセールスの電
話はすぐ繋がるのに対してサポートの電話は全く繋がらなく
ても、買う前からサポートの繋がりやすさをチェックするよ
うな人は少ないはずです。同じ直販メーカーだったマイクロ
ンは利益をあげられず消えてしまいました。個人的には製品
はDELLより汎用性が高く良かったはずのメーカーなのですが。

私が評価するHPはプロフェッショナル志向のサーバーのメー
カーです。下手に家庭向け市場の消耗戦に巻き込まれて業績
を落としてサーバーのサポート、品質にまで影響が出るよう
な事にならないよう祈るだけです。

HPのブランドイメージは日本ではあまり浸透していないと思
います。確かにPDAに関する分野、関数電卓、プロッターでは
強い支持があると思いますが、大衆向けで一番目立つプリン
ター市場ではWIN系ではEPSON、CANONの壁に阻まれているよう
に見えます。

なじみのないメーカーを浸透させて製品を買わせるというのは
並たいていではありません。ソフトバンクもCompaqプレサリオ
で奮闘しているキヤノン販売ほど大衆向けの商売が得意とも思
えません。サポートの必要なユーザー、販売店に対してどれだ
け有効な手が打てるかで、今後HPが伸びるかどうかが決まるの
でしょう。未だサポートというものが要求される家庭向けパソ
コンに対していかに低コストで対応するか、は各社の課題でし
ょう。HPの家庭向け市場進出の報は私に武家の商法を思わせて
なりません。どうかサーバー製品に波及しませんように。

http://welcome3.hp.com/country/jp/jpn/welcome.htm
Welcome to Hewlett-Packard Japan




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