祭りの前
不定期コラム Vol.21
2000/05/01
世間では既に休みになっている方もいらっしゃるようで。
私の会社は暦日通りなので、3〜7日が休みです。何らかの
イベントを計画されている方には、まさにお祭りが来たよ
うなものでしょう。実際に博多どんたくやフラワーフェス
ティバルのような催し物もたくさんあります。
実は私もワクワク気分なんです。会社が連続休業している
この連休は、私のようなIT部門の人間にとっても、溜まり
に溜まった問題を一掃するまたとないチャンスです。週休
二日では片付かない力仕事をやれるからです。
世間ではこういう人間をワーカーホリック(仕事中毒)と呼
ぶようですね。まぁ私の場合、趣味と仕事がほぼ一致して
いると言ってもよいので、好きな事して給料もらえてスキ
ルもアップして、ってとこでしょうか。
考えてみれば独身だからできる無茶な時間の使い方と言え
るかもしれません。自分では会社に人生を捧げているつも
りは無いのですが、そういう風に見る人間もいるようです。
一つのビルの中の400台のクライアントPC全部に自分流の
カスタマイズをし、必要に応じて自作もし、セットアップ
から一切合切、足回りを好き勝手できるというのは、本当
に楽しい作業です。さすがにネットワーク関係は独力とい
う訳にはいかず、専門の小回りがきく企業と、いわば二人
三脚でやっています。
この黄金週間を逃すと次の3連休はハッピーマンデーを利用
した10月の体育の日の頃になってしまいます。さすがに
今年は2000年問題のような正月待機はしたくないので、
今回の休みでインフラ整備、次の三連休にソフトウェア
回り、というプランニングです。
島HUBを10/100のにデュアルスピードに100台入れ替えて
配線も綺麗にし、サーバーの統廃合をするという今回の
計画は大規模だけに事前の準備が結構必要でした。
サーバー統廃合に伴う設定変更は外部の業者を入れて動作
確認させる、その準備のために、PCの名前ラベルの漏れを
チェックし、不足分は作成し、貼って回りました。また
追加するプリンター用のプリンターサーバーを設置し、
サーバー上で最新ドライバのダウンロード、設定とクライ
アントからの共有設定簡単化のためのWIN9x用のドライバ
導入、コンセントが足らない個所はOAタップの配置、等
事前準備だけでも結構大変です。
プリンターは当初全てCANON LBPのLIPS4で統一していまし
た。その後、カラー化の進展で印刷枚数に応じてカラーの
インクジェットプリンターからカラーLBP、果てはネット
ワーク対応のカラーCOPY機まで導入しています。また最近
はPDFの印刷を主力のCANON LBP730が苦手にしているため、
PDF高速印刷が可能なROCOH NX70というA4 LBPを補完的に
導入始めました。詳しくはいずれプリンターの話の続きで
あの七転八倒のエピソードを披露するつもりです。
出身が北部九州のせいなのかどうかは判りませんが、基本
的には短期決戦、一夜漬けタイプです。事前に入念な計画
というのは苦手です。アバウトなライン、概略を決めて、
当日は何かあったらその時考える、という事で対応してき
ました。むろん近くに買出しできる秋葉原が近いからこそ
できる芸当です。一応ロジスティクス(兵站・補給)には
気を使っているつもりではありますが、見こみ違いは何時
だって起きるものです。計画経済じゃあるまいし。機械や
システムのメンテナンスはそう簡単でないということを、
いくら説明しても判ってくれない人は結構います。説明努
力の不足もあるのでしょうけど。物理的な制約(時間、予算
人的資源)を考慮しないで、すぐやれ、と言われるのが一番
困ります。IT、CIO的な立場からの検討が必要な事はこれか
らどんどん増えるはずですが、社内の組織も担当者も対応が
遅れてるのが実情です。
この仕事を例えば日曜から泊り込みしてまでやるのは何故
かな、と考えた時、やっぱりその場での充実感、緊迫感に
惹かれているのでしょう。
基本的には期限が無い仕事が多いのですが、例えば月曜日
の朝に社員が出てくるまでにマシンを交換して、場所も
作業の痕跡を残さず片付ける、なんて条件下ではちょっと
一発はまると刻々時間は経っていき、結果的に夜通しなん
てことにもなってしまいます。
一台、一台PCをセットアップしてデータをCOPYして環境を
移行させる作業の場合、使っているユーザーのカスタマイ
ズ度によって、毎回頭を使います。これが結構楽しいって
のは異常でしょうか。別にメールの中味を見るとかではな
くて、各自がどういう風にいじっているか、例えばメール
ソフトのフォルダがデフォルトのProgram Filesの無いか
どうかをショートカットのアイコンの設定を確認するとか。
私はゲームはしませんが、一台片付ける毎に、batoはまた
経験値を上げた、といった感覚を持ってしまいます。充実
感と時間に追われる感覚、最後には残り時間から片付けに
要する時間を計算してどこで妥協、見きるか、という決断
のスリル。自分でこう書いていると、やはりちょっと病的
かもしれませんね。
会社のフロア間の引越しをした時など、金曜の夜から始ま
った作業がうまく基幹業務のネットワークが動かないと
いった障害で、結局、配線屋さんと運用担当会社の社員
共々月曜の朝を私服で迎えた事もあります。でもあの時間
というのは苦というよりお祭りのような気分でした。
単純なルーチンワークでないからこそ、この手の仕事は
面白いし、解決には"何でも屋"的な対応が要求されます。
与えられた条件下(予算、クレーム者の職位、時間、他の
スケジュールとの兼ね合い)でどのような解を見つけるか、
が楽しいのです。
ずばり解決できるか、できない場合はどうするか、例えば
その場は別の新品を用意して切り抜けて、後で検証するか、
あるいは、あくまで追求するか、はたまた放置するか、とか。
自分の才覚で好き勝手した結果は結局自分で面倒見ないと
いけません。BIOSをふっ飛ばして再起不能にしたIBM PC750、
PentiumPro ODPを付けた途端死んだIBM PC365とか、こういう
例は数え切れなくあります。バイヤーの立場もあるため、
買って後悔した製品も山ほど。
今のポジションは結局自分で仕事を造って、無理やり維持して
いるようなものです。部門内のたった2台のマルチステーション
5550の世話から始まり、それを延々とやっている訳ですから。
スケール、金額は大きくなってはいますが。
ゼネラリスト志向の人事担当からすれば、理解不能の鬼っ子的
な存在かもしれません。そのせいかどうか判りませんが、若手
の部下など配属されませんし。かつてヘッドハンター会社の人
間と面接した時はこの体制に対してクレージーと言われた事も
あります。属人ではなくてチームで運営するのはリスクマネジ
メントを考えれば当然の事なんですけどね。
情報システム部門の評価が低すぎるというのは毎年書いている
自己申告の内容です。最近は諦めた、と書いてます。もっと市
場価値や代替可能性に合わせた評価をやって欲しい気がします。
自分が思っているほど会社は個々人に頼ってはいない、代わり
はどうにかなると言われた事もあります。半分はこれは当たっ
ているでしょう。アウトソーシングもはやっていますし、金さ
え払えばできる事も多いです。
ただ、私は自分の会社の配下のPCに対し十数年の私のノウハウ
をどっぷりつぎ込んでいまし、結構カスタマイズしています。
単純な運用委託ではここまではできないと自負しています。
自分の仕事を楽にするための数々の見えない(見せない)工夫。
表面上はできたとしても細かいところまで手の入ったこのネッ
トワークを私の代わりに運営すると、確実に世間並か、それ以
下に質が下がるはずです。
ただ現在のシステムを全部捨ててガチガチの基幹業務的に運営
しようとすれば、ユーザーの声は別にして、それができる金が
ある会社ですから、自分の配下のシステムを維持・更新する
ためにどこまで自己主張するか、そのバランスが難しいです。
なんでもホスト(コンピュータ)周りでやりたがる、同業他社よ
り分散システムのノウハウがあまり無さそうな会社がバックに
いるだけに。
こういう現場の修羅場をこなしていると勉強をする時間がとれ
ません。時間は作るものだ、というのも判りますが、トラブルは
概して忙しい時にやってくると決まっています。早く時間を作っ
て何らかの資格を取りたい、というのが今後の課題としてありま
す。リストラされないためにも。
ギリシャ神話に罰として坂で下から岩を上げていき、後一歩と
いうところで岩が下に落ちてしまうというのを繰り替えす男の
話があります。技術革新の速いパソコンの世界もこういう観が
あります。マイクロソフトとインテルが仕掛ける速いCPU、新
しいOS、襲いかかる陳腐化リスク。安息の日々はありません。
問題はどちらかというと喜喜としてこの試練に立ち向かうとい
うかエンジョイしている自分の体質にあるのは判ってはいます
が、立ち止まった時はジ・エンドなんですよ、きっと。
腹に一物も二物もありますが、とりあえず頭を真っ白にできる
お祭りタイムまで後半日、というところですね。どんなゴール
デンウイークになるか、今から楽しみです。