ThinkPad Qualityは地に堕ちたか?

不定期コラム Vol.1a
2000/03/22 19:00更新

最近常々感じているのは、最近のThinkPadの品質の低下です。
IBMはHPでThinkPadQualityといって威張っていますが、
ユーザーサイドでは最近の情けなさに対する不満も結構出ています。
以下はThinkPad Clubを眺めていれば自ずと見えてくる不具合ですが、

TP600
・特に初期の2645-41Jでの塗装剥げ
・バッテリーの寿命の短さ(これも41Jで続出)

TP240
・キーボードのちゃちさ、不具合
・L2キャッシュがサスペンドからの復帰で無効
・ディスプレイのケーブルのレイアウトの問題
・工場出荷段階にDIMM増設でハイバネーション領域の確保エラーで起動できず

TP390E
・CardBus対応LAN CARD動かず

TP570
・ケースの剛性感のなさ
・かちゃかちゃキーボード

TP535X
・ユーテリティの動作検証の遅れ、提供ファイルの少なさ
・ヒートシンクの経年劣化なのかネジが外れる障害
・ディスプレイケーブルの損傷

一部はIBMが無償で修理に応じたり、BIOSの対応版が出たりで
修正されていますが、以前のTPを知る者にとってはとても信じら
れない不具合の連続です。特に個人ユーザーが多く、周りへの
伝播度等でその評判が市場シェアにダイレクトに影響すると思わ
れるサブノートのTP240でのキーボードの障害とL2のミスはあき
れるばかりです。私にはIBMがTP220で自らが切り開いたサブノー
ト市場の名声を自らの手で終焉に追い込もうとしているようにさえ
感じられました。開発は日本でやっていると最近のIBMの展示会
でもうたっていましたが、BIOSがIBMオリジナルではなくて外部調
達になったりとかして、従来のノウハウがうまく移行できていない
のでは、と疑っています。

TP240のキーボードも最近の3代目の4xJモデルのものは良くなっ
たと言われてきています。でも、何故最初からできなかったのかが
大いに不満です。市場に不具合のある製品を出して市場での評価
で改善していくという手法はどこかの大手ソフトウェアメーカーの
やる手ですが、あれと似たり寄ったりの感があります。サブノートの
ようにユーザーの思い入れが業務用のマシンよりも大きいと予想
される製品については、より慎重に対処すべきだったのではないで
しょうか。

TP535X以降日本独自製品の路線には何かと制限が出ているという
見方はずっと前から出ていました。確かにTP240はワールドマーケッ
トに通用する製品コンセプトなのかもしれません。ですが、信頼性、
品質におけるところまで世界標準並にして欲しくなかったです。あれ
が世界標準レベルと言うのであればグローバルスタンダードは極めて
ずさんなレベルということになります。

"ThinkPad Quality"という言葉は並の品質なら敢えて"ThinkPad”の
文字を冠す必要はありません。重箱の隅をつつくような細かいチェック
をしている訳ではありません。今までのThinkPadが持っていた、
今にして思えば"過剰"とも言える品質に対しての賞賛の言葉が
"ThinkPadQuality"だったはずです。米ではあれでいいのかもしれ
ません。しかし思い入れの強い国内ユーザーの満足度を手に入れる
のに本当に最初のあの21Jのレベルでよかったのでしょうか。別に
台湾製造を責める訳ではありませんが、精度の高い品質を実現する
上でこの体制で本当に良かったのでしょうか。グローバルスタン
ダードは大いに結構です。PC98鎖国時代に燃えたDOS/Vの精神
もそこにありました。でもNECではありませんが、日本国内で養われ
た伝統というものもあるはずです。米国基準でいいのだからこれで
我慢しろ、というのであれば、残念ながらその時点でIBMに代わる
選択肢の検討を始める時期なのかもしれません。私はまだ使った
ことはありませんが、例えばエンドユーザーの声を聞き入れてトラック
ボールを復活させた某メーカーとかも試してみないと業務怠慢に問わ
れるかな、とかも考えています。日本IBMは大きな間違いをしようと
しているのではないだろうか、そういう見方も私の中に根強くあります。

確かに株主に報いるためにもコスト削減は大事な事です。我々ユー
ザーも安いに越した事はありません。だけどソーテックの安物ノート
ブックではなくて敢えてTPを買うのはTPの持つ絶対的な信頼性の
優位を当て込んでです。安さのあまり、これに疑問を持たせるような
事態の続出はユーザーの離反を招きます。

SONYが幸か不幸か業務用には手を出さず、DELLも大規模なメモ
リーのトラブルを起こしています。正直言って私はノートPCはIBMか
東芝しか買っていません。ですが、東芝は日本の市場ではユーザー
サポートが閉鎖的です。IBMは私にとっては業務に耐えうるマシンを
出している唯一のメーカーなのです。それがこの体たらくでは...

それでもまだTPを買っています。
それは過去の信頼度の高いモデルが安く手に入ること、と、
他社との比較優位でしかありません。

比較優位の元になっているのは
・WEBでの修理依頼可能
・部品センターや保守部隊の柔軟性
・最近のモデルのBIOS,ドライバの対応の早さ
・米IBMのオープン性
・ThinkPad Clubといったユーザー間の相互扶助可能な体制
といった点です。

マシンそのもののQualityというより、運用体制を評価して買って
いるというのが今の私の"ThinkPadQuality”への評価です。

以前に比べるとあまり全幅の信頼を持って人に推薦できる、と
いう訳ではありません。どうか外れの機種が来ませんように、
と祈りつつ、発注をかけるなり、人に勧める状態は続いています。
ただ、以前より製品自体は堕ちたと感じられるものの、まだ代わ
りのメーカーは見つかっていません。

他社にとっても今がチャンスです。IBMを蹴落とし忠誠心の強い
ユーザーを獲得するのにもってこいです。一度乗り換えさせて
信頼を獲得すればよっぽど変な失敗をしない限りずっと付き
合ってくれるはずです。物は溢れている時代です。
ユーザーの強い信頼と忠誠を勝ち取れるメーカーこそが生き
残っていけるでしょう。他に代わられるだけのメーカーは価格
競争に巻き込まれて体力を消耗して最悪共倒れになるだけです。
本当に良いものにはユーザーは対価を出し惜しみしません。
払った金に値するものが入手できるなら見かけのコストはそれ
ほど気にはしません。そうは言ってもマスマーケットの企業向け
では難しい、というのであれば、その場合はそれをなんとか切リ
抜ける工夫をするべきです。市場セグメントに合わせて売り方を
変えるなり、手はいくらでもあるはずです。それが可能なIT技術を
宣伝しているのはどこの会社ですか。

絶対の信頼から比較優位での信頼と変わってきてはいますが、
今の状態を少しでも改善して、TPなら絶対に安心と胸を張って
言えるような状態にまた戻ってもらいたいものです。
売り方ももう少し工夫してもらって。

激烈な価格競争の中では適わぬ願望なのかもしれませんが。
私の中でどこまで我慢できるか、なんて書かせないようにして
ください>IBM


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